制度設計と政策決定

2012年2月13日月曜日

NEDOプロジェクト報告会


2012年2月10日


NEDOプロジェクト関する学内の報告会がありました。NEDOプロジェクトというのは、イノベーション研究センター(IIR)がすすめている産官学連携研究プロジェクトの1つで、NEDOと共同で、NEDOの支援を受けた研究開発プロジェクトとプロジェクトに参加した研究者に関する調査研究です。


僕の研究チームのメンバーは、僕と松嶋君(IIRの特任講師)です。NEDO支援プロジェクトに関する質問票調査を分析して、その結果をインタビュー調査によって、補完しています。


公的支援の効果と公的支援を受けた研究プロジェクトの成功要因を明らかにするのが目的です。これまでの分析では、公的支援を受けることによってプロジェクトが社内で孤立する傾向にあり、それが、社内資源の活用を妨げ技術課題の克服が遅れたり、事業化に向けた社内正当化が困難になったりするということが明らかになってきました。


また、またプロジェクトが社内で孤立し、外部とのコミュニケーションが低下することは、開発技術の事業化を難しくするだけでなく、開発された技術の転用を含む波及効果に対してもマイナスの効果をもつことも明らかになってきました。


さらにインタビュー調査からは、各プロジェクトが公的支援を受ける事情やプロジェクトに対する企業の本気度などが異なり、そのことが事業化成果に影響を与えること見えてきました。


この研究は、これまで、Magiccとは直接関係していませんでしたが、インタビュー調査を進める中で、かなり多くのプロジェクトが水素関連のプロジェクトであることがわかり(しかも事業化できたものはほぼない)、そのあたりの成果と将来性をMagiccの一環として、引き続き、松嶋君と一緒に研究していきたいと思っています。

(青島矢一)

2012年2月4日土曜日

東大ものづくりセンターでのセミナー


東大のものづくり経営センターの研究会に呼ばれて話をしてきました。タイトルは「エネルギー、環境、産業発展の両立にむけて」。『一橋ビジネスレビュー』3月号向け論文の内容です。



ものづくりセンターの研究は、「おたく的(おっ、ここまでやるか、というくらい中に入り込む)」なものが多く、僕は好きで、いつも参考にしています。


今回の話では、エネルギー問題/環境対策を考える上で、技術進歩や企業や競争の現場を理解しないと将来大変なことになる、ということを主張しているわけですが、それには皆さん同意してくれたように思います。現場に入り込んでいる人なら、すぐにわかることです。


まあ、こうした政策的な発言をし始めるのは危険で、経営学者としての本筋を失ってはいけないわけですが、それでも、今は少し、出しゃばった方がいいのではと思っております。「同床異夢の罠」、「環境、エネルギーというマジックワード」、「市場拡大=経済発展という幻想」という3つで現状の問題を整理していますので、3月号のビジネスレビューを見てください。


研究会で得たことはいろいろありますが、印象に残っているのは「電力の質」の重要性。ものづくりの現場を知り尽くしている藤本さんならではの視点で、この点、これまで少々軽視しておりました。


確かに、日本のものづくりの強さを維持するためには、電力コストよりも、電力の質の方がずっと重要でしょう(日本の製造業の競争優位を考えれば自明)。もちろん、それに固執しすぎて、電力会社の既得権益を擁護しすぎてはいけないとは思いますが、再生可能エネルギーへの転換においても、如何にして需要サイドにおける電力の質を維持するかが極めて重要な視点だとあらためて思いました。


分散型システムの場合、供給資源に余裕があれば、質の担保が可能ですが、今の日本では供給側が逼迫しているので、分散型といいながらも全体最適を追求しないとおそらく質の確保は難しいだろうと直感的には思います。このあたり、今後考えていきたいと思います。


それにしても、藤本さんの、相変わらずのパワーには圧倒されました。研究の厚みが違いますね。さすがです。東大ものづくりセンターはいいところです。